運動しても大丈夫?性交渉や飲酒のリスク…「生理中にやってはいけないこと」【産婦人科医監修】
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福岡県の西区今宿にある婦人科クリニック『よう子レディースクリニック』で診療にあたっている渋井よう子です。
生理のときは、無理せず安静に過ごすように言われることが多いですが、具体的に「生理中にやってはいけないこと」がどんなことなのかは、なんとなくしか知らないという人も多いのではないでしょうか。
今回は、産婦人科医の視点から生理のとき、注意すべきことをご説明します。
〈医師プロフィール〉
『よう子レディースクリニック(婦人科・メディカルエステ)』院長の渋井よう子
東京出身で、「人のやさしさ」「食べ物のおいしさ」「住みやすさ」にひかれ、福岡県移住。現在、女子高生、女子中学生の母。女性の健康・美・幸せを軸とした「ハッピーライフサイクル」を理念に婦人科クリニックで産婦人科医として診療にあたっている。
Index
生理についての基礎知識
まずは、生理についての基礎知識をおさらいしましょう。生理とは「約1か月の間隔で自発的に起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」と定義されています。具体的に「約1か月の間隔」とは、生理開始日を1日目として次の生理開始前日までの日数が25~38日の間にあり、その変動は6日以内。「限られた日数」とは3~7日とされています。
そのため、生理周期が25~38日の間であれば、6日程度のズレは正常範囲内ということになります。また、個人差が大きく「先述した日数から数日ズレたから異常」と判断するほど厳密なものではありません。
生理のときの心と体のトラブルとは
ここからは、生理のときの心身の様子についてお話していきます。
生理前に起こりやすい不調
生理前にイライラするなど、精神面、体調面の不調に悩んでいる人も多いのではないでしょうか? これは一般的には『PMS(月経前症候群)』といわれるもので、多くの女性が抱えているお悩みです。
『PMS(月経前症候群)』とは「月経前3~10日間の高温期後半に発症するさまざまな精神的あるいは身体的症状で、月経が開始するとともに減弱あるいは消失するもの」とされています。具体的には以下のような症状があります。
・精神的症状:情緒不安定、イライラ、怒りやすい、気分の落ち込み、強い不安感、など
・身体的症状:下腹部の張り、疲れやすい、腰痛、頭痛、むくみ、胸が張る、など
特に精神症状が強い場合を『月経前不快気分障害(PMDD)』と呼び、『PMS』とは区別する場合もあります。これらの原因についてはまだ分かっていない部分もありますが、女性ホルモンの一つで高温期を作る黄体ホルモンが関係していると考えられています。
生理中に起こりやすい不調
生理のときには、生理痛といわれる腹痛に加え、頭痛、気分の落ち込みなど、心身ともに不調になる方が多い傾向です。日常生活に支障を及ぼす場合、月経困難症といいます。月経困難症は大きく分けて機能性(臓器に異常がない)と器質性(臓器に異常がある)に分けることができます。
・機能性(臓器に異常がない)の場合
機能性の場合は、生理初日から2日目頃の出血の多いときに症状が強く、痙攣性かつ周期性に下腹部に痛みを感じることが多いです。子宮の出口が狭いことや痛みを引き起こす物質であるプロスタグランジン(PG)などによって子宮の収縮が過度になることが、一般的な原因とされています。
この痛みは排卵がない周期に出現することはまれで、初経以降に排卵周期が整ってくると症状が出現するのが一般的です。
痛みの原因となるPGは子宮内膜から産生され、このPGにより子宮の筋肉が過剰に収縮し、血流が悪くなることで痛みが起こるとされています。また、生理のときにみられる吐き気、下腹痛、下痢、頭痛などの全身症状は、PGとその代謝産物が血液を介して全身に広がることによって起こると考えられています。
・器質性(臓器に異常がある)の場合
一方、器質性月経困難症の原因疾患としては、子宮内膜症・子宮筋腫・子宮腺筋症などが考えられます。器質性月経困難症は、臓器に異常があることから婦人科診察で診断がつきうる生理痛です。年齢を重ねるたびに症状がひどくなることが多く、鎮痛剤が効かなくなってくる場合もあります。
生理中は身体を冷やしてはダメ
では、ここからは、生理中の不調を少しでも抑えるために「生理中にやってはいけないこと」についてご説明します。
まずは、「身体を冷やすこと」。生理時の出血は、主に排卵を伴った場合に起こり、生理前に2週間程度高めだった体温が下がるタイミングにもあたります(基礎体温ではこの高めの体温の時期を高温期、体温が下がってからの時期を低温期と呼びます)。このように体温が下がる時期に生理が起こるため、いつも以上に身体を冷やさないように気をつけましょう。
冷えは、生理中の痛みを強くするほかに、免疫力を低下させる可能性もあります。薄着や冬場のシャワー浴は避けてくださいね。
生理中はタバコをやめる
タバコには、血管を収縮させてしまう物質が含まれており、子宮の血行を悪化させ、生理痛がひどくなってしまう場合があります。そのため、生理前~生理中は、タバコを吸わないようにするのがベターです。
生理中にしてはいけない?避けたほうがいい運動やする場合の注意点
骨盤を上げるような体勢は逆流する月経血を増やしてしまう可能性があるため避けましょう。生理中の適度なヨガやストレッチはおすすめしていますが、体位には注意してください。
また、激しい運動もこの期間は避けたほうがいいでしょう。
生理中にしてはいけない?性交渉についてのリスク
産婦人科医の視点から、生理中の性交渉は避けるべきだと考えています。生理中に性行為を控えたほうがいい大きな理由は2つ。
【理由1】感染症のリスクが上がる
上述した避けてほしい「骨盤を上げる体勢」ですが、性行為の場合、ほとんどがこの体勢となると考えられます。
さらに、生理中の性行為には子宮内に月経血を押し戻す行為が加わるため、骨盤を上げる体勢を取るだけよりも子宮内膜症のリスクが上がる可能性があるでしょう。
【理由2】子宮内膜症のリスクが上がる
性行為は、月経血のほかにも外からの細菌、場合によっては性感染症であるクラミジアや淋菌のような菌が子宮内に送り込まれる危険があります。生理中は子宮内膜が剥がれ落ち、子宮内には傷がある状態。そのため、骨盤内に感染が起こる可能性が生理でないときよりも高まるといわれています。
生理痛の原因となる子宮内膜症や骨盤内に広がる性感染症は、ひどくなると不妊症の原因や生理以外のときでも常にお腹が痛くなる慢性骨盤痛の原因になることがあります。
生理中に食べるのはダメ?避けたほうがいい食べ物や飲み物
・身体を冷やす食べ物や飲み物
上述の通り、身体を冷やす食べ物は好ましくありません。生野菜や果物の中には、体を冷やす食材が多いので気をつけてくださいね。生理中の出血で貧血になりやすくなる方もいるため、いつも以上にバランスの良い食事を心がけましょう。
また、貧血予防のためには、鉄分を多く含んだ食材を食べると良いでしょう。
・カフェインを含んだ飲み物
コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなどのカフェインを含んだ飲み物も避けたほうがいいでしょう。カフェインには、血管収縮作用があるため、血流が悪化する恐れがあり、生理痛を増強させてしまう可能性があります。
生理中だけでも気をつけてみてください。
・甘い食べ物や飲み物
ケーキやシュークリーム、クッキー、アイスクリームなどのスイーツにも注意が必要です。
このような甘い食べ物を食べると、急激に血糖値が上がります。身体はそれを下げようとするため、今度は急降下するのです。血糖値が下がると体温が下がるため、食べすぎには気をつけたほうがいいでしょう。
生理中に飲むのはダメ?アルコールのリスク
アルコールは、絶対にNGというわけではありませんが、摂取量には注意が必要です。お酒を飲むと血管が拡張するため、出血量が増え、生理痛がひどくなる恐れがあるからです。
また、生理痛がひどいために鎮痛剤などの薬を飲んでいる人もいるでしょう。その場合にも副作用を避けるため、飲酒は避ける必要があります。
生理中に快適に過ごすために必ずしてほしいこと
ここからは、不快な生理の期間を少しでも快適に乗り切るためにしてほしいことをお伝えします。
デリケートゾーンは清潔に保とう!ナプキンはこまめに取り替えを
生理中には、デリケートゾーンのお悩みも増えやすくなります。かゆみや、ニオイが気になる人も多いでしょう。
そんな不快感を軽減するためにも、デリケートゾーンは清潔に保ちましょう! 長時間同じナプキンを使用していると、雑菌が繁殖してしまい、それが原因でかぶれることもあります。
ナプキンは、2~3時間に一度は取り替えるのが好ましいでしょう。
生理が始まるか始まらないかアヤシイ……というときには、吸水ショーツを使うのもおすすめです。
「今日始まるかも」とアヤシイ日にも!話題の「吸水ショーツ」本音レポ【Nagi(ナギ)】
生理中を快適に過ごすためにしておきたいこと
ここからお伝えすることは、私が産婦人科医として、医院にきてもらっている患者さんにアドバイスしていることです。快適に過ごすためには、以下の方法を個人的におすすめしています。
自分を甘やかして!プチ贅沢しよう
いつも忙しなく生活している方も、この期間だけはゆっくりと過ごすことをおすすめします。普段使用していない、少し高価な化粧品や入浴剤を使いリラックスしたり、肌触りの良いタオルやパジャマを使ったりして、自分を甘やかしてみて。
自分にゆっくり丁寧に時間を使い、心にゆとりを持つようにしましょう。
無理しないで!リラックスして過ごそう
生理中は予定を詰め込まず、マイペースに過ごすようにしましょう。毎週行っているジムや習い事も、無理して行く必要はありません。
自分がリラックスできる時間を過ごすことを最優先に考えましょう。
ゆっくりと身体を温めよう
上述の通り、身体の冷えは生理痛を増強させてしまいます。足や腰などは冷やさないように心がけてください。汗をかかない程度にカイロや腹巻でお腹や腰を温めたり、ぬるめのお風呂にゆっくりと浸かったりするとよいでしょう。
軽いストレッチやヨガを無理のない範囲でやろう
ストレッチやヨガなど、ご自身にあった軽い運動を取り入れて血行を良くすることを促すのもおすすめです。
我慢せずに適度に鎮痛剤を使おう
痛くなりはじめたら、鎮痛剤をなるべく早く内服しましょう。
「鎮痛剤を気軽に使うと癖になる」「効きが悪くなると思い、薬を飲むのを我慢している」という話をよく聞きます。月に1回程度の生理のときだけ、鎮痛剤を使用するのであれば、異常な内服の頻度ではありません。もし、薬の効きが悪くなると感じるのであれば、痛みの度合いが強くなっている可能性が高いでしょう。
どれだけ注意しても生理痛がひどくなると悩む方へ
生理痛を悪化させたり、別の病気を引き起こしたりしないために「生理中にやってはいけないこと」をお伝えしてきました。しかし、どれだけ注意していても、生理痛が年々ひどくなっていると感じ、悩んでいる人もいると思います。痛みの度合いは個人差が大きく、周りの人と比べることができません。そのため、生理痛でお困りの人は、自分の痛みが病的な範囲か判断するのは難しいでしょう。
ただ、生理痛に困っていれば、日常生活に支障が出るほどまで受診を待つ必要はありません。気になることがあったら婦人科を受診してみてください。
「生理痛」で病院に行ってもいいの? ひどいときのセルフケア方法も【産婦人科医監修】
生理中でも学校や仕事に行かなければならない人も多いでしょう。生理中にしてはいけないことに注意しながら、無理せず、自分なりに快適に過ごせる方法を探してみてくださいね。(文/渋井よう子)
※この記事は公開時点での情報です。
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※文/渋井よう子
※日本産科婦人科学会(2018)『産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版』(金原出版)
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