今こそおうち映画祭!気鋭の映画スタジオ『A24』作品からおすすめ3本【福岡映画部/石渡麻美】
こんにちは!福岡映画部の石渡麻美です。
福岡映画部では、福岡で映画文化を盛り上げるべく、映画イベントの企画・運営などを行なっています。
このコラムでは、映画の楽しみ方がちょっと広がる、次に観たい映画が見つかる。そんな映画情報をお届けしていきます。
今、皆さんお家で過ごす時間が増えていますよね。不安な時間が続きますが、そんな時こそ映画で楽しい時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?
一度見てほしい!映画ファンたちが推す、映画スタジオ『A24』
数多くの映画の中から「好きな映画」と出会うのは一見、難しそうですが、“映画スタジオごとに追う”というのは間違いない手段の一つ。
今回ご紹介するのは、今注目の映画スタジオ『A24』作品です。
映画ファンの間では、「このロゴが見えたら安心」と言われるほどの信頼を集める映画スタジオ『A24』。大手映画会社の作品がひしめく世界の映画祭で、次世代のインディペンデント映画スタジオとして多くの話題作を世に送り出しています。
今回は、そんな『A24』作品から、“おうちで観られる”おすすめ映画3本をご紹介します。
1:恐怖が振り切ると爆笑に変わる『へレディタリー/継承』
〈作品あらすじ〉
主人公家族・グラハム家では、祖母の死をきっかけに不可解な出来事が起こり始める。不気味な表情で空虚に天を見つめる娘。何かを恐れる様子で奇怪な行動をとり始める息子。夢遊病に悩まされながら、ひたすらドールハウスを作り続ける母…。
祖母から受け継いでしまった“何か”に気づかぬまま、不気味さと違和感に満ちた日常の末、グラハム一家が迎える怒涛のラストとは?
<石渡的注目ポイント>とにかく怖い!面白い!
監督は最新作『ミッドサマー』が話題となっている、アリ・アスター。日米古典ホラー映画から着想を得ながら、「監督自身の体験」を元に作られたという本作(どんな体験をしたら、こんな映画が作れるのかが、気になりすぎますが…)。
物語は、どうあがいても逃れられない「家族のつながり」を裏テーマに、「○○(←これは何なのかは見てのお楽しみ)」に支配された一家の運命を描く。公式サイトでもネタバレ厳禁の御触れが出されたほどの話題作、その衝撃のストーリー展開について行けるかはあなた次第。近年稀に見る恐怖映画でありつつも、「恐怖が振り切ると爆笑に変わる」を地でいくこの映画が、きっとあなたに元気をくれる…はず!
『へレディタリー/継承』4,700円/DVD発売中/発売元:カルチュア・パブリッシャーズ、販売元:<レンタル>カルチュア・パブリッシャーズ、<セル>TCエンタテインメント
2:静かな夜にひとりで観たい。儚く切ないオバケ物語『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』
Blu-ray・DVD『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』好評発売中
発売元:ハピネット
〈作品あらすじ〉
郊外の一軒家で幸せに暮らす若い夫婦。ある日夫が不慮の事故で亡くなってしまう。病院で遺体を確認した妻は、現実が受け入れられないまま自宅へと戻る。しかし、死んだはずの夫は、シーツを被った姿で起き上がり、そのまま妻のいる自宅へと戻ってきてしまう。
夫の存在に気づかない妻は、少しずつ湧き上がる悲しみの実感に苦しみ打ちひしがれる。そんな妻をただひたすらに見守る夫。しかし、妻は前に進むためにある決断をし、残された夫は妻が残した最後の想いを求めて現世を彷徨い始める。
<石渡的注目ポイント>記憶の旅の物語
主人公・Cを演じるのは『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のケイシー・アフレック、妻・Mを演じるのは『ドラゴンタトゥーの女』『キャロル』のルーニー・マーラ。
死後の世界を、ゴースト視点で静かに描く本作。現在・未来・過去と時空をまたぎながら、やがてたどり着く物語の意外な真実。愛を確かめ、魂が浄化された主人公が迎える本当の最後は、あまりに清々しく、切ない。
本作は、地縛霊となった主人公を通し、「思い出の住処」を描き、「人が生きる意味」の本質を問いかける。観るほどに味わいを深める、儚く切ない「オバケ物語」を、ぜひ、静かな夜に。
3:今、一本観るならばこの作品を。『荒野にて』
〈作品あらすじ〉
15歳の主人公・チャーリーは、幼いころ母に捨てられ、叔母とは疎遠。大雑把だが愛情溢れる父と2人で暮らしていたが、とあるきっかけで天涯孤独の身となる。
さらに追い討ちをかけるように、愛情かけて世話をしていた競争馬のピートが殺処分されることとなった。唯一の心の拠り所である相棒までもを失う危機に追い詰められたチャーリーは、ピートの手綱を手に、荒野へと駆け出す。
『荒野にて』3,800円(税別)/発売中/発売・販売元:ギャガ
<石渡的注目ポイント>今、一本だけ観るならばこの作品
世界中が先の見えない不安に包まれる今。それでも生きていかねばならない日々に、希望を見出す力をくれる。今こそ観てほしい、静かな良作。
ウィリー・ブローティンの小説『Lean on Pete』を、『さざなみ』のアンドリュー・ヘイ監督が映画化した本作。物語は、主人公・ピーターの日課・ランニングで始まり、ランニングで終わる。荒野へと駆け出す時も、犯した過ちを振り切る時も。不安に負けそうになりながらも、自ら選んだ道を走り続ける。わずかな希望に向けて。
この映画は、困難な状況においての人の過ちや迷いを正直に映し出すと同時に、善悪では語りきれない人の良心が存在することも教えてくれる。そして、ギリギリの局面において、その一縷の良心が誰かを救うということも。
以下に引用するのは、原作序文に記されたジョン・スタインベックの言葉。
「確かに我々人間は弱く、病気にもかかり、醜く、堪え性のない生き物だ。 だが、本当にそれだけの存在であるとしたら、我々は何千年も前にこの地上から消えていただろう」
どうか今、この映画がひとりでも多くの人に届き、寄り添いますように。
以上、『A24』作品から「お家で観れるおすすめ映画3本」をお届けしました!
“自分たちが観たいと思える映画”を作り出す次世代のインディペンデント映画スタジオ
『A24』は、2012年の設立以来、映画の都ハリウッドではなく、ニューヨークに拠点をおき、「分かりやすさだけに媚びない、それでいて独りよがりの芸術主義に走らない、そして何より確固たる個性が光る映画」=「彼ら(A24)自身が観たいと思える映画」をしっかりと観客の元へと届け、映画ファンの信頼を獲得してきました。
今後も新作映画の公開が続々と予定されている『A 24』。この機会に、是非、過去作での予習を楽しんでみてはいかがでしょうか?
まだしばらく続きそうなおこもり生活ですが、こんな時こそ、おうち映画祭!ご自宅で楽しい時間を過ごしてみてくださいね。(文/石渡麻美)
【参考・画像】
※石渡麻美(福岡映画部)
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