よくお客さんに叱られる!? やみつきになるパンがそろった“珍しい”『パン工房 リーブル』(北九州・戸畑)【古後大輔の福岡パンライフ#29】
ぱんにちは〜!
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今回はドイツパンが主役のお店『パン工房 リーブル』の魅力をご紹介。
ドイツパンが主役のアットホームなお店『パン工房 リーブル』
JR鹿児島本線の九州工大前駅から徒歩数分。
周辺に高い建物はほとんどなく、見上げれば空が大きく広がっている。近くには銀天市場など歴史ある商店街があったり、昔ながらの木造家屋や長屋が連なり、古き良き時代の息吹を感じることができる地域。
『パン工房リーブル』は、そんなまちの一角にある。
店の裏手は住まいになっていて、店主・保田さんは寝る暇を惜しんでパンづくりに精を出している。店を切り盛りするのは奥様が担当(時には小さな娘さんが店に立つこともあるとか)。
アットホームな家族経営を絵に描いたようなパン屋だ。店頭にある黄色いビニール屋根が、そんなほのぼのとした店の雰囲気を象徴している。
この場所は保田さんが生まれ育った場所であり、以前、祖母が駄菓子屋『保田商店』を営んでいた場所。
「当時この辺で育った人は必ずといっていいほど通ってくれていた駄菓子屋でしたからね。店を閉じてからかなりの年月が経っているんですが、未だに『保田商店』があった場所っていうイメージの方が強いかもしれません」と保田さん。
『パン工房リーブル』はそんな由縁がある場所で、今から12年前にスタートした。
店頭にはプレッツェル生地やライ麦を使った食事パンなど一日約40種類以上のパンが並ぶ。
食パンやクロワッサン、調理パンや菓子パンは少量、かろうじて置かれているものの、主役のパンの大半はドイツパンが占める。
何を隠そう『パン工房リーブル』は、なんと「ドイツパン」が主役の店なのだ。
「ようやくです。地域のみなさんのおかげでなんとか12年目を迎えることができました」
保田さんはこの12年間、「あーでもない、こーでもない」と店のパンづくりを毎日試行錯誤しながら、地域の祭りやイベントに積極的に参加したり、時間を惜しむことなく飲食店用の卸売やメニュー開発に尽力したり、委託販売や販路拡大にも自ら営業していくなど、「自分のパン」を地域の人たちに知ってもらうためにとことん精を出してきた。
そんな日々の活動が今の店の土台を築いている。お昼の開店から夕方まで、老若男女が入れ替わり立ち替わりやって来ては、どっさりとお目当ての品を携えて帰っていく。
プレッツェルにハマる幼稚園児、ライ麦パンが主食のご老人……と、なんと指名買いの常連客の多いことか。
店頭に立つ保田さんの奥様との世間話を楽しみしている人も多いそうだ。
ドイツパンでもない、日本のパンでもない、名付けて「保田製ドイツパン」
まだまだ馴染みがないドイツパンをメインにしたまちのパン屋が、昔ながらの住宅街で、しかも、しっかりと地元に根付いた営業形態でやっていけているということは(パン好きの方ならお分かりいただけるだろうが)、福岡ではかなり稀なことである。
料理人や菓子職人を経験した後、オーストリアパンの名店『サイラー』でパンづくりを学んだ保田さん。
「パンのイロハから、奥深さや楽しさ、本当にたくさんのことを学ばせていただきました。今でもたまにサイラーの店頭を訪れては、初心を思い出し、勉強させていただいています」
その後、山口県の人気店で腕を磨き帰郷。途中、飲食店経営を学ぶため大手チェーン店で店長を経験してから、念願だった独立開業を果たした。
「パンって本当に自由だなって思うんです。ということは正解がない。ずっと修行ですよね。だからこそ、地域文化や地元食材、旬のネタや菓子や調理といった自らの経験、そのすべてを総動員して挑戦していくしかない。自分が作りたいって思うパン、これをお客さんに食べて欲しいって思いつくパンは全部つくってみたいんです」
そんな保田さんがつくるパンは、ドイツパンといっても、一般的なイメージとはちょっと違う。たとえるならば、ドイツと日本の「あいの子」。
ドイツパンの個性と日本の食べやすいパンの良いところ、そこに保田さんの経験と個性がかけ合わさって生まれたオリジナルのものが多い。名付けるとすれば「保田製ドイツパン」だ(勝手にそう呼ばせていただいている)。
その真骨頂がプレッツェル生地を多用したメニューの豊富さだ。塩、めんたいこ、2種のチーズといった味付けプレッツェルや、プレッツェル生地と地元食材や旬の食材を生かしてつくったベーグル、調理パン、菓子パンの数々。
プレッツェル生地特有の風味と歯ごたえがあるクラスト(パンの表面)、そこに日本らしいしっとりとした小麦の味わいとモチモチっとした食感のクラム(パンの内側)が合わさり、どれもここでしか食べられないおいしさのオンパレードだ。
ライ麦をふんだんに練りこんだ、ほんのりとした酸味がクセになるドイツ伝統の食事パンもこの通り、よりどりみどり。
『サイラー』所縁のオーストリアの伝統パンも見逃せない。
料理や菓子の道を通ってきた保田さんらしい手作りのジャムや具材を生かした調理パンや菓子パン、編み込みの手法を駆使したアレンジパンも、興味深いものが多い。
一捻りも、二捻りも、工夫が施されたメニューばかり。どれにいつ出会えるかは一期一会。巡りあったら迷わずチャレンジしてみよう。
取材終盤のこと。「本当に睡眠時間を削りながら頑張っているので、家族みんな尊敬しています。でもですね……あれもつくってみたい!これもつくってみたい!ばかりなので、品数ばっかり増えて、頻繁にメニューが変わるので『あれはもうないとかいね!?』ってよくお客さんに叱られるんですよね。しかも、ちょっとでも納得がいかないところがあると『これは出せん!』って言って売らないので、もう本当こちらとしては困ったものですよ(笑)」と奥様(ご苦労のほどお察しいたします)。
されど自由なパン屋としての職人魂はパン好きの胃袋をガッツリ掴んでいるのでご安心を。
こんなやり取りをしていると、ここは駄菓子屋『保田商店』なんじゃないかと思えてきた(笑)。
地域の住民の憩いの場となる「駄菓子屋的パン屋」っていうのもこれからの時代にはアリ!というか必要になって来るんじゃないかと思う。
一説によるとドイツの伝統的なパンの種類は1,500種以上といわれている。ビールやソーセージのイメージが強いドイツ。実は世界有数のパン大国なのだ。
伝統と規律を重んじながらも、きっと既成概念やイメージにとらわれない自由なパンの愉しみ方をする作り手と食べ手がそんな文化を生み出してきたのだろう。
パンは自由。『パン工房リーブル』に足を運ぶ度に、いつもその魅力を教えてもらっている気がする。(文/古後大輔)
〈店舗詳細〉
パン工房 LIBRE(リーブル)
住所:北九州市戸畑区小芝3-7-20
詳細はパン工房 LIBREへ
【参考・画像】
※古後大輔
※シティ情報ふくおか
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