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大丸別荘

【博多の奥座敷】名湯、美食、趣の空間。老舗旅館「大丸別荘」で過ごす非日常の旅

2026.04.30

やわらかな陽が差し込み、窓の外を眺めると心がふわりと軽くなって、どこかへ出かけたくなる今日この頃。

遠くへ旅する時間はないけれど、新鮮な空気を吸って心潤う時間を過ごしたい。そんなとき、意外なほど近くに“非日常の旅”を満喫できる場所があるのを知っていますか。

博多からわずか30分。かつて「博多の奥座敷」と呼ばれた福岡県筑紫野市の二日市温泉街の一角に佇むのが、慶応元年創業の『大丸別荘』。6,500坪の敷地に、1,300年の名湯と3,500坪の庭園、そして五つの時代を超えた歴史が静かに息づく老舗旅館です。

福岡 二日市温泉 大丸別荘

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

創業160周年を機に、玄関の暖簾をはじめ、会席料理やアメニティ、売店など館内各所でリニューアルを実施。老舗の風格はそのままに、新たな魅力を纏いはじめた大丸別荘の“今”を、徹底レポートします!

暖簾をくぐれば、160年の時が温かく迎えてくれる「大丸別荘」(筑紫野市・二日市温泉)

到着後、まず目を奪われるのが玄関にかかる博多織の暖簾。博多織で最も古い織元『西村織物』が手がけた特注の一枚で、創業160周年のリニューアルの一環として新たに設えられました。

上質な糸が織りなす気品ある光沢と繊細な模様に、くぐる前から自然と背筋が伸びます。この暖簾の前で写真を撮る人も多く、夏になると藍色から涼やかな白へと掛け替わるそう。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 のれん

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

視線を上に向ければ、玄関の屋根に湯玉を模った飾り瓦が。昔から変わらないという温泉宿のシンボルが「ようこそ」と語りかけてくるようで、なんだかうれしくなります。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 飾り瓦

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

暖簾をくぐり、チェックイン。エントランスに敷かれた絨毯のクルクル模様がかわいらしく、この渦巻き模様は「温泉には魂がある」と語っていた先々代の4代目当主がデザインした湯玉がモチーフだとか。

ロビーラウンジ「迎賓の間」で始まる、大人のゆとり時間

チェックインを済ませたら、ロビーラウンジ「迎賓の間」でウェルカムドリンクを。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 ロビーラウンジ

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

スパークリングワイン、八女茶、コーヒーなど5種類から選べますが、窓の外でそよぐ木の葉の影と木漏れ日に誘われたら、迷わず選びたいのがスパークリングワイン。シュワシュワとのぼる気泡を眺めながら、特別な時間の始まりに乾杯。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 ウェルカムドリンク

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

「迎賓の間」は、ブルーとイエローの絨毯に格子窓と障子が映える、和洋折衷のレトロモダンな空間。ヨーロッパの曲木家具を思わせるアームチェア、欄間や組子の繊細な意匠、アールデコを感じさせる壁面の装飾パネル── 和の素材と洋のデザインが調和し、大正から昭和初期にかけての日本のモダニズムを彷彿とさせます。天井を見上げると、数寄屋造りに見られる精緻な天井装飾が施され、随所に配された美学と伝統技術の結集に、思わず感嘆の声が漏れてしまうのは私だけでしょうか。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 ラウンジ

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

壁際には木彫りのオブジェが並び、ギャラリー的なムード。モデルは「家族」だそうで、身を寄せ合ったり楽器を奏でたりする姿が、温かな空気を纏っています。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 オブジェ

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

ちなみに、ロビーラウンジは昼間、宿泊者は喫茶スペースとしても利用可能。大丸別荘オリジナルのケーキと、こだわりのコーヒー豆を使った中深煎りの一杯を楽しめますよ(飲食は有料)。

歩くほどに惹き込まれる、時代の回廊

客室へと向かう際、吹き抜けの階段や長い廊下を抜けるたびに、空間のテイストが移り変わることに気づきます。竹と漆喰の和の壁に異国情緒のあるアートが掛かっていたり、鮮やかなモザイクタイルの壁とアーチの開口部が組み合わさっていたり、絨毯張りの階段を上れば煉瓦調の壁へと景色が一変。

和、洋、アジアン、アールデコが自然に溶け合う、どのジャンルにも分類できない大丸別荘だけの空間美。建築関係者が見学を兼ねて泊まりにくるというのも頷けます。

そして、調度品やアート作品の数々にも目が離せません。博多人形や津屋崎人形、黒田藩ゆかりの絵師・吉嗣拝山の書画、さらには昭和天皇が宿泊された際に使われた有田焼の名品も。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 調度品

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

時を重ねるほどに風格が増すこの「経年美化」は、クリエイティブの世界からも注目されていて、映画やドラマのロケ地、有名アーティストのライブ会場として使われることも多いとか。長い時間が育んだ大丸別荘の空間そのものが、ひとつの作品なのだと思います。

見どころは館内だけではありません。約3,500坪の回遊式日本庭園もまた、創業以来ほぼ変わらない姿を守り続けています。松をはじめ、桜や梅、ツツジが植えられ、樹齢100年を超える老樹も鎮座。石灯籠が点在する散策路を辿れば、戦前から祀られているお稲荷さんや、皇族来訪の記念碑など、歴史の痕跡にふれることができます。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 庭園

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

春は新芽が顔をのぞかせ、夏は緑が鮮やかに揺れ、秋は紅葉に色めき、冬はしんしんとした静寂のなかで梅が咲く。池のほとりに佇めば、街中にいることを忘れてしまうほどの静けさ。浴衣姿で池の鯉に餌をやる宿泊客の姿も見られ、しばらく眺めていたいほど絵になる穏やかな風景です。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 庭園

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

異なる時代に泊まるという贅沢

客室は4種類の建物に分かれ、「平安亭」、「昭和亭」、離れの「蓮魚庵」、現在改修中の「大正亭」を含む全41室。松本清張や美空ひばりが泊まった蓮魚庵、昭和天皇に愛された大正亭など、さまざまな物語を持つ部屋が揃います。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 渡り廊下

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

また、棟ごとに建てられた時代が異なり、その都度一から設計されてきたため、それぞれ違った意匠を楽しめるのも特徴。

部屋菓子には福岡のフードクリエイティブブランド『ハラペコラボ』が作る琥珀糖『こうぶつヲカシ』、アメニティには5つ星ホテルでも採用されている自然派化粧品「椿なの」シリーズを採用。ドライヤーは美容感度の高い人たちも注目する「LOUVREDO」のものが設置されています。

リニューアルで新たに揃えられたこうした品々が、老舗の品格に洗練されたセンスを吹き込み、ここで過ごす時間の特別感や高揚感をキュッと引き上げてくれるのです。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 部屋菓子

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

平安亭

平成元年に建築された「平安亭」は、リビングルーム(6畳)、和室の本間(10畳)、控えの間(8畳)の3間続きという贅沢な間取り。格式漂う数寄屋造りの空間で、リビングの椅子に腰かけると石づくりの滝や庭先の緑が目の前に広がります。同じ棟でもフロアによって間取りや望む景色が少し異なり、2〜4階の客室には内廊下が付いていて、3階には春に桜が美しく映えるお部屋も。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 平安亭

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

1階の客室で注目してほしいのが、トイレの天井装飾。30年以上勤めるスタッフですらここ数年で気づいたという隠れたアートで、客室ごとに絵柄が違うのだそう。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 トイレ

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

そして檜の内風呂に設えられた丸窓は、湯けむり越しの景色が風情たっぷり。体はぽかぽか、心はひたひたに満たされ、至福のひととき(※内風呂は温泉ではありません)。

内風呂 大丸別荘

画像:大丸別荘

昭和亭

一方、「昭和亭」の建物は、昭和45年築。重厚な木製扉の奥に、風格ある屏風が飾られた10畳の和室と、4畳半の掘りごたつの間が続きます(※夏場はこたつ布団が外されます)。

平安亭に比べるとこじんまりとしていますが、このおこもり感がむしろ心地よく、1人利用の宿泊にも人気だとか。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 昭和亭 客室

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

風合い豊かな土壁、手の込んだ意匠の引き戸、替えの利かない格子のガラス戸。建具の一つひとつがオーダーメイドで、ほとんどが建築当時のまま。機械では生み出せない、職人の手仕事に宿る温もり。扉には貝殻のようなモチーフが施されていて、部屋菓子の箱や館内のインテリアにも同じモチーフがあちこちに。滞在した人だけが気づくポイントかもしれません。

窓越しに見える風に揺れる木々や、移ろう陰影をぼんやり眺めていると、慌ただしい日常の輪郭がやわらかくほどけていくよう。古き良き昭和の空気が息づくこの部屋では、本当に時代を旅しているような気分になるから不思議です。

このほか、最も歴史ある客室「蓮魚庵」も。 心地よい静寂に浸れる、離れの特別室です。

開湯1,300年の名湯に身をゆだねる

さて次は、大浴場「次田(すいた)の湯」へ。清々しい風を感じながら半屋外の渡り廊下を抜けると、ひょうたんモチーフのサインが入り口を知らせてくれます。この「次田の湯」の名は、二日市温泉のかつての呼び名に由来しているそうです。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 渡り廊下 大浴場

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

大丸別荘が湯を引く二日市温泉は、奈良時代に発見されたと伝わる開湯約1,300年の名湯。泉質はアルカリ性単純温泉で、神経痛や関節痛、冷え性などに効能があるとされ、なめらかな肌触りから「美肌の湯」としても親しまれてきました。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 大浴場 温泉

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

自然の川と滝つぼをイメージしたという源泉掛け流しの大浴場。石積みの浴槽が手仕事ならではの有機的な曲線を描き、湯けむりが腰窓の奥に広がる緑をおぼろげに滲ませ、まるで幽玄の世界。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 大浴場

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

奥の湯口から注がれる源泉は48.5℃、打たせ湯は38.4℃と少しぬるめ。水深90cmの浴槽に肩までゆっくり浸かると極楽気分で、細かな湯気が顔をやさしく包み込みます。

脱衣スペースもまた印象的で、陶器製の番号札が添えられた脱衣籠、竹の編み込み細工の壁、大理石の洗面台と、美しい上に快適。湯上がりまで心地よさが続き、体の芯まで温まったあとは庭園散歩……というのも最高の過ごし方。宿泊者は、朝風呂もぜひ楽しんでくださいね。

目にも舌にも贅沢な、月替わりの会席料理とこだわり朝食

夕食

温泉で体がほどけたら、お待ちかねの夕食へ。宿泊の客室とは趣の異なる会食用の個室(掘りごたつ・イス席あり)に通されます。

大丸別荘の夕食は、創意工夫を凝らした月替わりの会席料理。コースは『天拝』(8,690円)、『四王寺』(13,200円)、『宝満』(18,700円)の3種類。献立は毎月変わり、歳時記を意識した構成も見どころで、四季折々の旬や縁起物が膳に華を添えます。

取材時の4月は、木の芽時ならではの春の食材が主役でした(※写真は『宝満』)。器はすべて有田焼で、豪勢な創作料理を目の前に、心がパァッと華やぎます。仲居さんが一品ずつ産地や料理の背景を伝えながら配膳してくれるので、知的好奇心とともに味わいが一層深まります。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 夕食

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

八寸はミル貝とホタルイカのうるい、合馬産筍と木の芽味噌田楽など、春の彩りが凝縮された一皿。続く造りは、圧巻の伊勢海老の姿造り。透き通るような身の美しさに、思わずゴクリ。よもぎ豆腐と鮑を合わせた椀物で舌をととのえ、海老芋の小判揚げ、脂ののった赤ムツの焼き物へ。

鍋物のはりはり鍋は、熊本産馬肉のとろけるようなやわらかさと深い旨みが鮮烈で感動的。野菜のしゃきしゃきとした食感と、さっぱりとした後味も軽やかな春の気配を感じさせます。

締めの筍ごはんと、伊勢海老の旨みが溶け込んだ味噌汁の余韻まで堪能。香りや食感、味わいなど、噛み締めるたびに五感が冴え渡り、心が満たされます。
※今回ご紹介している内容は2026年4月の「宝満」のもの。内容は月替わりです。

朝食

ぐっすり眠った翌朝は、地産地消を凝縮した朝食を。名物のだし巻き玉子は、JR九州ファーム『うちのたまご』を使い、出汁をきかせたやさしい味わい。また、糸島直送もずくのさつま揚げ、明太子の老舗『楢﨑商店』の青唐辛子明太子、伊万里牛のしぐれ煮、有明海産『一流浜』の焼き海苔と、小鉢の一つひとつに九州・福岡が誇る食の実力が詰まっています。

もう一つの看板が、自家製豆腐を使った湯豆腐。高オレイン酸大豆を使い、自家源泉の温泉水を調合して仕上げたこだわりの一品です。

ぷくぷくと煮立つ様子を眺めながら食べ頃を見極め、とろりと滑らかな口溶けを自家製の醤油ごまダレでいただきます。もちろん、湯葉も逃さずに。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 湯豆腐

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

宿泊の予約時に、客室と食事コースの組み合わせを自由に選択することができます。朝食付きプラン(1泊2日1人料金16,300~33,700円)でリーズナブルに楽しむもよし、夕・朝食付プラン(1泊2日1人料金23,700〜52,890円)で贅を堪能するもよし。目的や予算に合わせた滞在を満喫してください。

温故知新の息吹、これからの大丸別荘

創業160周年を迎えた大丸別荘では、玄関の博多織の暖簾や、会席料理の刷新、アメニティの一新と、リニューアルが着々と進んでいます。ギフトショップも新たに装いを変え、リピーターに評判のオリジナル石鹸をはじめ、客室のアメニティ、食事で味わった『うちのたまご』、博多曲げわっぱや大川組子といった福岡の伝統工芸品も販売。宿泊の余韻を自宅に持ち帰れるのがうれしいポイントです。

ロビーラウンジは、夏頃にカフェとして一般開放を予定(2026年4月現在)。さらに金・土・日の週末限定で夜はジャズバーに変身し、ジャパニーズウイスキーを中心とした厳選の洋酒を音楽と共に楽しめる場になるそう! 再訪の口実には十分すぎます。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 ラウンジ

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

思い立ったらすぐ行ける、ロマン溢れるショートトリップ

美しい日本建築や調度品を眺めながら、「これはいつの時代にどうやって作られたものだろう」と想いを馳せる。そんなロマンもまた、大丸別荘の尽きない魅力のひとつ。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 庭 門

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

本物の素材と技術が紡いできた空間には、時を経ても色褪せない美しさと温もりが宿り、代々受け継がれてきたおもてなしの心が、訪れる人をやさしく包み込んでくれます。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 欄間

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

宿泊はもちろん、温泉付きのお食事プランや立ち寄り湯でもその世界に触れることができるので、まずは気軽に暖簾をくぐってみてください。

福岡 二日市温泉 大丸別荘 暖簾 玄関

画像:ARNE/撮影:山辺学(calm photo)

ほんの少し足を延ばした先に、特別で感動的な非日常の時間が広がっていることに、きっと驚くはずです。(取材・文/下川マイ子)

<施設情報>
■二日市温泉 大丸別荘(だいまるべっそう)
住所:福岡県筑紫野市湯町1丁目20-1
電話番号:0120-44-4126(受付 9:00〜21:00)
チェックイン:15:00/チェックアウト:11:00
立ち寄り湯:7:00〜23:00(最終入場22:00 ※10:30〜11:30は清掃時間のため利用不可)、料金2,000円
HP:https://www.daimarubesso.com/(リンクはコチラ
Instagram:@daimarubesso.jp(リンクはコチラ
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【参考・画像】
※撮影/山辺学(calm photo)

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