“わからなさ”を味わうアニメ&“北イタリアの美青年”!GWにおすすめ映画2選【福岡映画部/石渡麻美】
こんにちは!
福岡映画部の石渡麻美です。福岡映画部では、福岡で映画文化を盛り上げるべく、映画イベントの企画・運営などを行なっています。このコラムでは、映画の楽しみ方がちょっと広がる、次に観たい映画が見つかる。そんな映画情報をお届けしていきます。
今、おうちで過ごす時間が増えていますよね。不安な時間が続きますが、そんな時こそ映画で楽しい時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?
ゴールデンウイークこそ、“演出”を加えておうち映画を楽しんで!
ただでさえ増えていたおうちでのリラックスタイムが、さらにまとめてやってきましたね、ゴールデンウイーク!
今後なかなかないであろうこのチャンスこそ、“映画どき”。気になっていた映画を、作品の雰囲気に合わせた“おうち環境”を演出して、楽しんでみるのはいかがでしょうか?
長期休暇らしく、今回ご紹介する映画のテーマは「開放感」。
タイプの異なる2本の映画のご紹介と合わせて、最後におすすめの鑑賞環境をご紹介しています。お休みのひとときの参考に、ぜひ最後まで楽しんでくださいね!
1:まるで、海洋版『2001年宇宙の旅』!『海獣の子供』
「海獣の子供」BD&DVD発売中・レンタル実施中
〈作品あらすじ〉
気持ちを言葉にすることが苦手な主人公・瑠花は中学生。二人暮らしの母とも距離を置き、楽しみにしていた夏休みには学校でも行き場を失ってしまう。沈んだ気持ちで、離れて暮らす父が働く水族館を尋ねた瑠花は、家族の思い出が詰まった大水槽の中を泳ぐ少年「空」に出会う。
ジュゴンに育てられたという「空」には、神秘的な美しさを持つ兄「海」がいる。瑠花と「空と海」、三人の出会いをきっかけに、地球ではさまざまな超常現象が起こり始める。夜空から彗星が海へ落ち、世界中の生き物が日本へと大移動を始め、大きなザトウクジラの「ソング」が「命の祭りの〈本番〉」のはじまりを告げる―。
<石渡的注目ポイント>「わからなさ」を楽しむ映画体験を。
文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞した五十嵐大介による同名漫画を原作に、『鉄コン筋クリート』などで知られるSTUDIO4℃が製作を手掛けた本作。監督には『ドラえもん のび太の恐竜2006』の渡辺歩、作画監督には『かぐや姫の物語』の小西賢一を迎え、音楽には久石譲と米津玄師。主人公の声を演じるのは芦田愛菜、脇を固めるのは稲垣吾郎、蒼井優ら豪華キャスト。
ネームバリューだけでも本気度がうかがえる本作は、この布陣を持ってして、なんと原作の連載期間と同じ6年もの歳月をかけて作られたというから驚き! アニメーション映画の製作期間は長くて2〜3年ということを考えると、本当にどうかしてる(褒めてる)としか思えない力の入れよう。
オススメしておいてなんですが、この映画、本当にわからない。
こうして原稿を書きながらどれだけ思い返しても、資料をあたっても、「この映画が描いたものはなんだったのか?」わからない。そもそも、その「答え」はきっと存在しないのだろうと思いつつ、それでもやはり考えるのをやめられない、そんな感覚です。
作中では、ひと夏のボーイミーツガールな冒険譚の体裁をとりながら、物語が後半からクライマックスに進むにつれて、一切のセリフが省かれていきます。物語に没入した先に広がるのは、漆黒の夜の海と命の光を捉えた圧倒的な映像表現。そして、大胆に、それでいて語りすぎない音楽。頭に刷り込まれた「大切なことは言葉にならない」というキーワードと、「生命の根源」を追う果てしなく壮大なテーマを前に、観客はただただ圧倒される他ありません。
「この感覚、どこかで覚えが……」と思い返したのは、あの映画史に残る傑作『2001年宇宙の旅』を観たときのこと。感性を解き放たれながらも、知っている言葉では到底言語化できない。観た後にも細く長く心に残り続ける「なんだったのか?」というあの感覚。自分の中に未知の感情が生まれるその問いこそが、この作品を観る一番の醍醐味なのかもしれません。
2:あの夏を、誰が否定できようか―。『君の名前で僕を呼んで』
〈作品あらすじ〉
1983年、北イタリア。家族とともに避暑地にある別荘にやってきた17歳の少年・エリオは、大学で美術史を教える父の助手でインターンの大学院生・オリヴァーと出会う。
はじめは、彼の傍若無人な性格を嫌っていたエリオ。しかし、街を案内し、本を読み、音楽を奏で、共に過ごすうちに、エリオはオリヴァーに特別な想いを抱くようになる。やがて、その想いを抑えきれなくなった二人は激しい恋におちるが、夏は終わりを迎え、オリヴァーが去る日が近づいていた-。
<石渡的注目ポイント>目も耳も心も。そして、知的好奇心までも多幸感で満たされる。
世界美青年トレンドランキング(私調べ)で殿堂入りを果たしているティモシー・シャラメと、勝ち組イケメンの代表格アーミー・ハマーがカップルを演じた本作。正直、観る理由はこれだけで13分くらいありますが……。
おうちにこもる今こそ、わたしたちが全力で浴びるべきは、美青年たちのバックを支える北イタリアの太陽の光と吹き抜ける風! そして、理想を絵に描いたような別荘に、たわわに実るアプリコットと庭で楽しむブランチ。なんて優雅なの!と、叫びたくなる本作ですが、そんな多幸感をさておいてもオススメしたい見どころがさらに2つ。
ひとつはやはりラストシーン。「長回し」とだけお伝えしておきましょう。積もり積もった感情を表現し、ティモシー・シャラメを世界にしらしめた3分30秒、至極当然必見です。
そしてもうひとつは、クライマックスに訪れる父と息子の会話シーン。「ああ、監督はこのセリフを聞かせるためにここまでを描いてきたんだな」と思わせる程の名シーン。あの夏を、あの恋を、誰が否定できようか―。この作品のように心揺れ動く様が、人々の心に沁み入れば、世界はもっと平和になれるのではないか……。
鑑賞後、そんな風にすら感じられた名シーンに注目です。
『君の名前で僕を呼んで』Blu-ray&DVD 好評発売中
発売元:カルチュア・パブリッシャーズ セル販売元:ハピネット
価格:3,900円(税別)
おうち映画も演出を楽しんで!
ちなみに、『海獣の子供』を観るオススメは夜。できる限りお部屋を暗くして、できれば携帯の電源もオフにして。アニメーションに描かれた「光」を感じられる没入環境がつくれたら、きっと最高の映画体験ができるはず。
そして、『君の名前で僕を呼んで』を観るオススメは晴れた日のお昼前。窓辺にジュースとパンとフルーツのブランチを用意したら、いつものルームウェアよりちょっと素敵なシャツを着て。あとは、春の風を感じながら、美青年たちのご尊顔拝む多幸時間をお楽しみください。
どれだけお部屋に閉じこもろうと、私たちは映画があればどこへだって行ける! 作品の雰囲気に合わせた映画鑑賞は本当におすすめです。せっかくのゴールデンウイーク。世界に、宇宙に、深海に、映画を通じてさまざまな旅を楽しんでみてはいかがでしょうか?(文/石渡麻美)
【参考・画像】
※石渡麻美(福岡映画部)
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