【ドキュメント!】18歳博多の新人芸妓、デビューの日
博多にも「芸妓さん」がいるのを知っていますか?
12月12日(木)に放送されたFBS福岡放送『めんたいワイド』の人気コーナー『ドキュめん』より、お座敷で芸を披露する「芸妓(げいぎ)」の世界に、1人の女子高校生が足を踏み入れ、新人芸妓としてデビューするまでの様子をご紹介します。
18歳博多の新人芸妓、デビュー
博多座2019年12月7日(土)。艶やかな芸妓たちが一堂に会し舞う「博多をどり」。毎年12月に博多座で開かれ、今年で29回目です。
この大舞台に初めて立ったのは大西琴未(ことみ)さん、18歳です。
「どの舞台でもできるように がんばれたらいいな」
憧れとともに飛び込んだ 「伝統の世界」。そこで彼女を待っていたものとは?
稽古場入り(11月27日)
この日は稽古場入り。直方市出身の大西さんは、福岡市内の「博多伝統芸能館」に 踊りの稽古に通っています。
「まだ帯だけできなくて 、やっていただいているんですけど」
現在、通信高校3年生の大西さんはこの夏から「半玉(はんぎょく)」とよばれる見習いの芸妓になりました。まだ芸名もついていませんが、毎日が充実していると言います。
「(稽古は)朝が早いんですけど、学校はお昼から授業、それの繰り返しなんで。たまにどっちの日か分らなくなる」
小学生のころから地元、直方の祭り「日若(ひわか)踊り」に出るなど、着物を着ることが大好きだった大西さん。中学生のころから三味線にも親しんできました。
高校3年生になり自分の希望がかなう就職先を探す中で行き着いたのが「芸妓」の世界。
「就職をいろいろ探していて、着物を着て動ける仕事を探して、兵庫などにも職場見学にいったんですけど、違うなと思って。親戚から『博多券番』があるよといわれて」
1年の集大成である「博多をどり」を盛り上げるために
料亭のお座敷や祭りの舞台で唄や舞を披露する「芸妓」。博多に登場したのは江戸時代とされています。
新春の風物詩として有名な十日恵比須神社の「かちまいり」では 艶やかな姿を披露します。その芸妓が所属する、いわば事務所にあたるのが「券番(けんばん)」。最盛期の大正時代、博多には5つの券番があり、2,000人の芸妓がいたとされています。
しかし今あるのは、「博多券番」ただ1つ。芸妓の数は、過去もっとも少ない14人です。そこで、博多券番を支える博多伝統芸能振興会が行ったのが、10年ぶりの公募でした。
今年の新人は、ふたり
今年夏に行われた公募には、10代から40代までの10人の女性が応募し、選考の末、2人が博多券番の門をくぐりました。博多伝統芸能振興会事務局の出水さんは「よかったですね。ほんと。ゼロだったらどうしようかと思っていた」と言います。
そのうちの1人が高校生の大西琴未さん。
そして、もう1人は宗像市出身の千紘(ちひろ)さん(34)です。
千紘さんは「10代のころ5年間京都で 同じような仕事をさせていただいていました。 舞妓さんです」。ルーキーの1人は頼もしい経験者です。
本番目前(12月5日)
現役の高校生で新人の芸妓、大西琴未さんがデビューを飾る「博多をどり」本番が目前に迫っていました。稽古を続ける大西さんについて師匠の花柳輔太朗さんは「初めてなんですけど 度胸があって、臆せずやっている」と話します。一方で、課題も見つかりました。本番で使う扇子が新しいため固く、うまく開けるか心配なようです。
当日(12月7日)
迎えた本番当日。楽屋では慌ただしく準備が進みます。先輩の芸妓たちが黒の「裾引き(すそひき)」といわれる衣装をまとう中、大西さんだけは、かわいらしい黄色の衣装です。「すごい目立つので、とにかく集中して」と大西さん。博多芸妓の中で、唯一の10代の大西さん。先輩芸妓の粋な計らいで、誰が見ても分かる、目立つ衣装に袖を通しました。
まもなく開演とあって博多座のロビーは大混雑。1日3公演でおよそ2,800人の観客を迎えます。およそ2時間の舞台を芸妓たちが入れ替り立ち替わり盛り上げていきます。
「博多をどり」恒例の九州各地の「民謡」シリーズ。かつて京都で舞妓をしていた千紘さんが10数年ぶりに、舞台に復帰しました。堂々とした様子はさすが、です。
一方、舞台袖では。大西さんが「緊張しています」「汗かいています。でもおしろい取れないのが すごいな」。
そして大西さん、いざ舞台へ。
演目は、「博多をどり」のフィナーレを飾る「祝い目出度(めでた)」。
18歳の新人のお披露目。舞台の中央からのスタートです。扇子、そして、着物の裾のさばきも 無難にこなし、堂々と初お披露目を終えました。「(扇子も)ちゃんと開きました。安心しています」「これが始まり。終わりではないので、これからの舞台とか、 お座敷とか頑張っていけたらと思います」
伝統の担い手としてスタートラインに立った大西さん。一人前の芸妓として「一本立ち」する日まで。修行の日々が続きます。(文/ARNE編集部)
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