
夢を抱いた場所で働く!「マリンワールド海の中道」飼育員・川名愛鈴さんインタビュー【私の推しごと#33】
福岡ゆかりの人に、「お仕事」の話から、個人的に推している「推しごと」の話まで、普段聞けないいろんなことを聞く『ARNE』のインタビュー企画『私の推しごと』。
#33は、福岡市東区の水族館『マリンワールド海の中道』で働く飼育員・川名愛鈴さんの登場です。
子どもの頃に憧れた職業にたどり着き、今や飼育員の中堅どころ。動物とロックをこよなく愛する川名さんの、リアルな日常を伺いました。

画像:ARNE/撮影:田中紀彦(Studio Red Star)
1995年生まれ、福岡県朝倉市出身。『福岡ECO動物海洋専門学校』卒業後、『マリンワールド海の中道』に入社。3年間の営業職を経て、8年前より海洋動物課所属。
「お仕事」について
Q:水族館の飼育員さんって、具体的にどんなことをしているんですか?
ショーの運営をしたり、動物のトレーニングをしたり、エサの準備をしたり、健康管理をしたり、いろいろです。
『マリンワールド海の中道』には飼育員が41人いて、海洋動物担当が25人、魚担当は16人です。海洋動物担当は「かいじゅう(海獣)チーム」「イルカチーム」「アシカチーム」の3つに分かれていて、私は「かいじゅうチーム」。7人のメンバーで、アザラシ10頭、アシカ3頭、イルカ2頭、スナメリ2頭の飼育を担当しています。

画像:ARNE/撮影:田中紀彦(Studio Red Star)
Q:水族館好きなら一度は憧れる職業だと思います。川名さんは何をきっかけにこの仕事に?
最初のきっかけは小学3~4年の頃、このマリンワールドでイルカを実際に触ったことだと思います。胴長を着てイルカプールで直接イルカに触れるイベントがあって、確か限定6組だったので、両親と朝5時半から並んでチケットを買って参加しました。
―初イルカの感触覚えてます?
弾力のあるゴムを触っているような、濡れたナスビを触っているような。
もともと小さい頃から動物が好きで、特にイルカが大好きだったのでとても感動したのを覚えています。そんなイルカたちと心が通じ合っているように見えた、当時の飼育員さんがかっこ良くて、私もここで働きたい、トレーナーになりたいと。
―そこからどういうルートで?
ドルフィントレーナー専攻がある専門学校に行って、国家資格の潜水士も取り、マリンワールドの海洋動物課の採用試験を受けました。大卒で入ってくる人もいて、ルートはいろいろあるのですが、狭き門であることは確かです。私のときは70人くらい受けて、合格したのは3人程度だったかと。そして私も落ちました。
―はじめは営業職で入られたとか。
そうです。海洋動物課の試験に落ちた後に、営業職の採用試験があり、受けました。自分がやりたい仕事とは離れているけれど、とにかくマリンワールドで働きたいという気持ちが強くて。3年間、営業の仕事をした後、海洋動物課へ異動になりました。今年8年目になります。夢を抱いた場所で仕事できるなんて幸せ者です。
Q:憧れの職業に実際に就いていかがですか? 夢と現実と。
しんどいことはたくさんあって、夏は紫外線がものすごいし、冬は寒いし、過酷です。でもやっぱり、動物とトレーニングする中で「通じ合えた!」と感じる瞬間はとんでもないやりがいを感じますし、これがあるからいろいろ乗り越えられます。

画像:ARNE/撮影:田中紀彦(Studio Red Star)
―通じ合えた!というのはどういう瞬間ですか?
たとえば動物に「手を振る」動きを教えるとして、最初は私がいくら「手を振って」のサインを送っても、当然何もしてくれませんよね。でも根気よく続けていると、ふと手を振るような動きをすることがあるんです。そしたらすかさず「それだよ!」ってホイッスル(高周波の音が出る笛)を吹いて教えてあげる。
―そしてエサをあげて褒めるんですね。
そうです。時間をかけて一つずつ、いいところを拾って拾って拾っていると、あるとき、動物もひらめくんです。「こういうこと?」って。その瞬間はもう、「それだよ! それそれ!」って心が通じ合った感じがします。
―サインは決まったものがあるんですよね?
サインは共通です。でも、誰がサインを出してもやってくれるというものではなく、やっぱり新人のトレーナーなど初めまして同士だと通じ合えず、「ん?」みたいな顔をされます。
私たちからすると同じサインを出しているようでも、人によって速さや手の形などが微妙に違うし、動物からは違って見えるのかもしれません。動物って人間のことを本当によく観察しているから。
Q:動物と信頼関係を築くために一番大事なことは何でしょう?
難しい……。でも、まずは私という存在を覚えてもらうことかな。顔や動きはもちろんですが、アザラシやアシカは耳が聞こえているので、「おはよう」などの声かけもしっかりして、声も覚えてもらいます。ちなみにイルカは、水中でのコミュニケーションに特化した聴力を持っていて、人間の声のような低周波の音は聞こえづらいようです。だから顔、動き、そしてホイッスルでコミュニケーションを取ります。

画像:ARNE/撮影:田中紀彦(Studio Red Star)
Q:ショーでの解説もされていますよね。
『かいじゅうアイランド』で行っているステージ『GOGOアザラシ』は特にお客さんとの距離が近く、みなさんの反応がダイレクトに聞こえてきます。私たちの解説に、「へ~そうなんだ!」ってリアクションしていただけるとやっぱりうれしいですね。
―飼育員のみなさん、しゃべりも上手だなといつも感心します。
私はあまり得意な方ではないんですが、みんなたくさん練習していて、先輩方から言葉の引き出しをもらったりしながら、みなさんに動物の魅力が伝わるよう一生懸命しゃべってます(笑)。私も中堅どころになってきたので、今後はしっかり後輩の指導もして、良いトレーナーを育てていきたいです。
「お仕事」のイチ押し
川名さんが担当している『かいじゅうアイランド』は、『マリンワールド海の中道』1階の屋外にあり、ゴマフアザラシ、カリフォルニアアシカ、バンドウイルカ、そしてケープペンギンがのびのび暮らしています。さまざまな体験メニューも用意されていて、動物たちの意外な素顔を垣間見ることができますよ。
Q:『かいじゅうアイランド』で行われているイベントはどんなものがありますか?
まず、私たちのチームが解説を務める『GOGOアザラシ』。ゴマフアザラシ1頭がステージまでやって来て、お客さんの目の前で得意技を披露します。腹筋をしたり、おなかをポンポン叩いたり。かわいい仕草をぜひ見てあげてください。1日1~2回実施、約10分のイベントです。

画像:ARNE/撮影:田中紀彦(Studio Red Star)
今年4月にスタートしたのは『アザラシと記念写真』。プール下の水中観察路でアザラシと一緒に写真が撮れます。水中でアザラシにじっと止まっておいてもらうトレーニングは2カ月かかりました……。実施は土日・祝日(GWやお盆など超多客時は除く)の15:20~、参加費は1グループ(5人まで)1,000円です。
『パクパクアザラシ』は、プールにいるアザラシやアシカへのエサやり体験です。プール横の冷蔵ロッカーに入っている魚(1皿500円)を購入して、トングを使ってあげてください。予約不要で毎日実施(開館~エサ売り切れ次第終了)しています。
イルカのエサやり体験『パクパクイルカ』(土日・祝日のみ、1人1,000円)も大人気です。
体験参加は事前チケットが必要なものもあるので、ホームページを確認してください。
Q:川名さんイチ押しの、『かいじゅうアイランド』の見るべきポイントを教えてください。
夕方、アザラシの陸上での姿をぜひ見ていただきたいですね。いつもは水中にいるアザラシですが、日中の『パクパクアザラシ』でおなかが満たされた夕方頃になると、みんな陸上に上がってきてひっくり返って寝るんです。どーんと寝っ転がって、おなかをポリポリかいたりしている姿は本当にかわいいですよ。
いつも6頭くらい打ち上がってますが、不思議なのは、みんなソーシャルディスタンスを守って、均等な距離を保っていること。1箇所に固まったり、くっついて寝たりしないんです。自分のお気に入りの場所があるのかなあ。私も毎日この光景を見るのが楽しみなんです。
