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インタビュー 劇団四季 宇都宮千織さん

ミュージカル『オペラ座の怪人』に出演!劇団四季・宇都宮千織さん独占インタビュー【私の推しごと#26】

2025.11.27

福岡ゆかりの人に、「お仕事」の話から、個人的に推している「推しごと」の話まで、普段聞けないいろんなことを聞く『ARNE』のインタビュー企画『私の推しごと』。

#26は劇団四季俳優、宇都宮千織さんの登場です。

現在、『キャナルシティ劇場』(福岡市)で上演中の不朽の名作『オペラ座の怪人』で、主要キャストの一人、ラウル・シャニュイ子爵を演じています。昼公演を終え、私服に着替えた宇都宮さんをキャッチ! 素顔が垣間見える貴重なインタビューとなりました。

「宇都宮 千織(うつのみや・ちおり)」プロフィール

1997年9月7日生まれ、宮崎県出身。母や姉の影響で5歳の頃にクラシックバレエを始め、声楽やピアノのレッスンも重ねる。高校卒業後の2016年、劇団四季の研究生オーディションに合格して研究所入所。『オペラ座の怪人』のアンサンブルを皮切りに、『王様の耳はロバの耳』(詩人チキン)、『マンマ・ミーア!』(スカイ)、『キャッツ』(スキンブルシャンクス)、『バケモノの子』(一郎彦/青年)などを演じ、着実にキャリアを重ねている。2024年からは『オペラ座の怪人』ラウル・シャニュイ子爵役を務め、その響きのある歌声とみずみずしい演技に注目が集まる。

「お仕事」について

Q:昼公演お疲れさまでした! 客席もとても盛り上がっていましたね。

福岡は初日(2025年9月15日)から盛り上がりがすごくて、カーテンコールも“熱い”です。拍手の音がわーっと押し寄せてくる感じがして、毎回感動しています。

画像:ARNE/撮影:田中紀彦(Studio Red Star)

Q:宮崎のご出身だとか。劇団四季の俳優をめざしたきっかけは何でしたか?

もともと母と姉がクラシックバレエを熱心にやっていて、僕の名前の一字「千」はそのバレエの先生からいただいたそうです。そんな環境の中、僕も5歳からバレエを始めたのですが、男の子は少ないし恥ずかしくて一時期やめちゃって。劇団四季の『アンデルセン』という作品が宮崎で上演され、観に行ったのがちょうどそのころです。当時はこれが劇団四季の作品だという認識すらなかったのですが、心に強烈なインパクトが残ったのを覚えています。バレエ教室にはその後も通いつつ、中学3年のときに合唱部に入り、そのまま地元の音楽科のある高校に進みました。声楽を専攻してレッスンを重ね、合唱部にも所属していました。合唱部、強かったんですよ。そんな中、福岡で劇団四季の『キャッツ』が上演されるというので観に行ったら、これがもう衝撃的で。四季一員になりたいと研究生オーディションを受けて合格しました。

―研究所の入所は極めて狭き門だとうわさに聞きますが。

そうですね。18~25歳がオーディションを受けられて、毎年数十人ずつ入所しています。1年間みっちりレッスンを受け、卒業試験に合格し、卒業が認められたら正式に劇団のメンバーになることができます。

Q:四季での初舞台は『オペラ座の怪人』なんですね。

アンサンブルで、「KAAT 神奈川芸術劇場」で初舞台を踏ませていただきました。今振り返って考えると、当時はミュージカルのことは何もわかっていなかったように思えるほど、がむしゃらでした。

―ラウル役に選ばれたときの心境は実際どうだったんでしょう?

劇団内でオーディションがあり、「よし、やってやるぞ」と意気込んで受けたのですが、いざ、キャスト表に自分の名前が入っているのを見たときは「本当に選ばれたんだ……(静)」と。大きなプレッシャーを感じました。もちろん、うれしい方のプレッシャーですよ。自分がアンサンブルで出演していたときにメインキャストを演じられていた方々と本当に一緒にお芝居できるのか、力が足りているのか、作品を引っ張っていくことができるのかといろいろ不安もありましたが、お稽古を重ねていくとみんな助けてくれて、なじんできて。役が自分にハマった感じがします。

画像:ARNE/撮影:田中紀彦(Studio Red Star)

Q:俳優としてお仕事される中で、大事にしているマイルールはありますか?

普段から変に盛り上がり過ぎたり、落ち込み過ぎたりせず、テンションを一定に保つように心がけています。うれしいことや悲しいことは当然あるんですが、いつも同じフラットな状態に見えているんじゃないかと思います。

―なぜテンションをフラットに保つ必要が?

たとえば『オペラ座の怪人』ではオークションのシーンから始まるのですが、本番前にテンションが上がり過ぎていると、幕が開いてすぐ、その場面のラウルの心情に気持ちを寄せていくのが大変なんです。舞台に立つ前に気分が盛り上がったり沈んだりしても、絶対に、いったん気持ちを冷静なところに戻してから役と向き合うようにしています。稽古場でも同じですね。もともとパッションを外に表現するのは好きな方ですが、演じていないときはあえてバランスをとって冷静に冷静に。舞台上でどんな感情にも即座に対応できる柔軟性を持っていたいです。

Q:公演で全国各地に行かれるとき、必ず持ち歩くものはあります?

最近はマッサージグッズが欠かせないですね。気に入っているものがいくつかあって、部屋でリラックスするときはもちろん、本番前にアップしながら体をほぐすのに使うこともあります。

―ボディケアを大事にされているんですね。宇都宮さんは胸板が厚くて大きく見えて舞台映えするなあと今日拝見していて思ったのですが、かなり鍛えているんですか?

意識して鍛えているわけではなくて、もともと鳩胸なんです。そして骨が太いし、肩幅も広くて。こういう骨格の人は歌に向いているらしく、舞台上で大きく見えているならうれしいです。

オペラ座の怪人 劇団四季 ラウル

撮影:阿部章仁

Q:宇都宮さんにとって一番うれしい瞬間は?

やっぱりカーテンコールですね。唯一、お客様の反応をダイレクトに感じられるのがカーテンコールなんです。観客の皆さまの表情は舞台の上からよく見えるので、笑顔ですごい拍手してくださってたりするともう、ジーンときます。と同時に「今日しっかりやれたかな」という反省も始まるのですが。以前、ファミリーミュージカル『王様の耳はロバの耳』に出演したときは上演後にお客さまをお見送りして、小学生たちとイエーイ!ってハイタッチして……「やってて本当に良かった」って感動したこと、忘れられないですね。

Q:今後の目標を。

お客さまに感動していただけるようなお芝居を、というのはもちろん、より共感していただけるような役づくりができる俳優になりたいと思っています。同じ役でも俳優が変われば解釈は微妙に違ってくるものだし、俳優の性格や素の部分が役に乗ることもあります。お客さまが自分自身と重ね合わせ、共感できる部分があればきっと、その作品は心に届く。僕が普段からフラットに、“普通”であり続けることを大事にしているのは、この共感性を高めるためかもしれません。お客さまが安心感や共感を覚える部分を、ピックアップして拡大して豊かに表現できるような俳優をめざしたいです。

「お仕事」のイチ押し

1988年の日本初演以来、劇団四季が8,000回以上の上演を重ねてきたミュージカル『オペラ座の怪人』。福岡でのロングラン公演(2025年9月15日~2026年4月5日)は1996年、2003~2004年以来3度目となり、会場の「キャナルシティ劇場」には連日多くのファンが詰めかけています。「ザ・ミュージック・オブ・ザ・ナイト」「オール・アイ・アスク・オブ・ユー」など珠玉のミュージカルナンバーに、格調高い舞台美術や衣装……せつなく、ロマンチックなこの物語は今もなお観客の心を魅了してやみません。

宇都宮千織さんは、クリスティーヌ・ダーエの幼ななじみで、オペラ座の怪人(怪人)と対峙するラウル・シャニュイ子爵役を演じていらっしゃいます(宇都宮さん含む4名の俳優がラウル役としてキャスティングされており、週間キャストは随時発表されます)。

オペラ座の怪人 劇団四季 ラウル

撮影:阿部章仁

Q:宇都宮さんが『オペラ座の怪人』を初めて観たのはいつですか?

四季の稽古場です。衣装も舞台装置もない通し稽古を見たのが初めてで、客席でじっくり観たのはその後になりますね。

Q:作品の魅力について教えてください。

荘厳な音楽はもちろんのこと、スピード感のある演出も魅力の一つだと思います。ほとんどすべてのシーンが“途中から”始まるのが特徴的で、シーンの切り替え時も観客はふっと休む暇がない。いつの間にか作品のスピード感に乗せられてオペラ座の世界にハマっていく方が多いのではないでしょうか。拍手することも忘れ、作品に没頭する……観客をそういう状態に誘う、あえて意図した演出だと聞いています。

また、『オペラ座の怪人』の魅力はその“人間くさい”ところにもあると思います。魔法が使えるかのようにさまざまな場所に出現したりする怪人も結局1人の人間で、愛情の受け方や表現が不器用なだけ、美しいものを求め続けていただけ。僕が演じるラウルは裕福で、何不自由なく育ってきた若者ですが、クリスティーヌと出会い、怪人に嫉妬を覚えて戦いに挑みます。本当に人間らしい物語で、時代を超えて人々の共感を呼ぶ名作たる所以だと思います。

オペラ座の怪人 劇団四季 マスカレード

撮影:阿部章仁

Q:これまで多くの俳優がラウルを演じてこられましたが、宇都宮さん自身、この役をどう捉えていますか?

先輩たちが演じてきたラウルのイメージはもちろん頭にありますが、実際に台本を読んで、僕だったらこうするという部分、たとえばセリフの受け取り方や次のセリフを言う動機など、自分なりに考えて変えることもあります。歌う場面は特に、俳優の年齢によっても表現できる“愛の色”が違ってくると思うので、これからも試行錯誤して僕なりのラウルを探していきたいですね。

Q:ラウル、怪人、クリスティーヌの3人が客席の方をまっすぐ見て歌うシーンは特にもう圧倒されました。

舞台上でも、怪人とクリスティーヌからすさまじいエネルギーが飛んでくるんですよ。2人を結ぶ濃密なエネルギーのビームが本当に見えるようで、ラウルとして本気で嫉妬してしまいます。こんな魔法のような瞬間がまさに、生の舞台の醍醐味かもしれません。

■劇団四季 ミュージカル『オペラ座の怪人』
会場:キャナルシティ劇場(福岡県福岡市博多区住吉1-2-1 キャナルシティ博多ノースビル4F)
会期:2025年9月15日(月)~2026年4月5日(日)
座席料金:バリューC席4,500円~ピークS1席14,000円
チケット問い合わせ:TEL0570-008-110(劇団四季ナビダイヤル 10:0017:00)
劇団四季HPhttps://www.shiki.jp/applause/operaza/(リンクはコチラ